企業不正と行政書士
~ 前号からの引用 ~
社内の不正が発覚した!というとき、どのように対処していますか。
自己流ですか。外部に丸投げですか。
また、不正案件の対応が完了した後の再発防止は万全ですか。
そもそも、不正が起きないような工夫はできていますか。
当事務所では、専門的な知見に基づいて貴社の対応についてのアドバイスやお手伝いをすることができます。
次回は、そのようなサービスをご紹介いたします。
~ 引用おわり ~
前回、このように予告いたしました。
行政書士事務所が不正対応のアドバイス?と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、一般的な行政書士の守備範囲とは少々異なるように見えます。
当事務所の代表である長谷川は、行政書士である以前に、30年以上の企業勤務経験があり、そのうち20年間は法務の仕事に携わった者です。この間、世間における様々な不正事案について目的意識をもって情報収集し、それを自社の予防に活かしてきました。場合によっては、実際の不正案件の解決に関わりました。多くの場合、単なる手足ではなく、主導的な立場かそれに近い役割を果たしました。
具体的な内容を掲載する訳にはまいりませんが、様々な試行錯誤を経て、実際に不正が生じた場合に対応できる方針の立て方や実働部隊として役に立つ一定のスキルを身に着けたと思っています。
もちろん、企業における不正と一口に言っても、業界も不正の種類等も千差万別なので、すべてに対応できる訳ではありません。勤務先として5つの業種を経験したことは体験の幅にはつながりましたが、それでも世の中に存在する様々な業種の中ではほんの一部にすぎません。当然得手不得手はあります(詳しいことはご相談ください)。
企業法務を経験した後に、数年間「内部監査」の仕事をする機会を得ました。
内部監査においても、実務能力を認定する資格があります。有名なものとしては、公認内部監査人(CIA)、公認情報システム監査人(CISA)、そして公認不正検査士(Certified Fraud Examiner, CFE)の三つが挙げられます。いずれも米国に本部を置く個別の団体が認定する国際的な資格で、世界の多くの国に支部を有し、有資格者が活躍しています。認定されるためには試験に合格することと実務経験が求められます。
私も内部監査に携わっていたころ、公認不正検査士(CFE)の認定を受けました(本日時点で、有効に更新中です)。20年に及ぶ企業法務のキャリアの中で不正に対応してきた経験を、国際的なメソッドを学習することによって自分なりに整理することができ、さらに多くの新しい知識を得ることができました。
日本で公認不正検査士の認定を受けている人は、企業に属している人(内部監査、リスクマネジメント、コンプライアンス、経理・財務部門等)のほか、公認会計士、弁護士など本当に多岐にわたります(*1)。
この経験とノウハウをお役にたてたいと考え、当事務所の運営支援のメニューの中に「不正調査・対策」を加えています。
皆さまの中には、「行政書士がそのような業務を取り扱ってよいのか」と感じる方もおられるかもしれないので、少しだけ補足します。
行政書士には法定独占業務としての法的書類作成業務がありますが、法定外業務も認められています。法定外業務とは、簡単に言えば①法令・条例等の制限に反しない、②他士業の独占業務に抵触しない業務とされています。もちろん、「不正調査・対策」はそのいずれにも該当しません。
私は「不正調査・対策」を自分の経験と別の資格に従って取扱い業務としていますが、行政書士として法律上認められていないことに踏み込んでいる訳ではないことがおわかりいただけたことと思います。
不正調査・対策とは
皆さまにサービスを提供するにあたって、不正の調査・対策とは実際に何をどのようにするかということを説明すべきだと思います。
しかし、業務の性質上、あまり詳細を語るのは差し支えますので、公開されている情報の中から次の二つをお知らせしたいと思います。
公認不正検査士(CFE)の知識領域
公認不正検査士(CFE)の試験科目として、次の4つの知識領域が設定されているので、これらの領域について一定の知識を有することが求められます。以下、試験の出題範囲から抜粋して掲載します(*2)。
(1)財務取引と不正スキーム ― 会計、財務分析の基本、各種不正スキームに関する知識等
(2)法律 ― 不正に関する法律、訴訟手続き等
(3)不正調査 ― 証拠の取り扱い、面接調査、不正取引の追跡調査、調査報告書の作成等)
(4)不正の防止と抑止 ― 犯罪原因論、ホワイトカラー犯罪、職業上の不正、不正防止プログラム等
証拠、犯罪などびくっとするような用語が並びますね。公認不正検査士(CFE)は、究極的には法廷で通用するような報告書をまとめることを求められているので、どうしてもこのような表現が登場します。
しかし、本当に大切なことは、組織内で犯罪が生じないように適切に防止・抑止することだと考えており、独立した知識領域の一つとしてそれが挙げられていることでもお分かりいただけるかと思います。
専門教育
公認不正検査士(CFE)は、一度認定されればOKという訳ではなく、毎年継続的に専門的な教育を受けることを要求されます(科目は選択できます。一定の単位の取得が必要となります)。
どんなことを学んでいるのかをお知らせすれば、理解の一助となろうかと思いますので、一例として公開されている最新のe-ラーニング講座の項目について、一部を抜粋してお知らせします(*3)。
- 「会計」コース
財務諸表不正①:基礎知識、財務諸表不正②:内部統制と不正の発見、資産の不正流用:不正支出スキーム、など
- 「法律」コース
不正に関わる日本の法制度概論、刑事裁判制度、会社法と不正、民事裁判制度、不正調査に関わる法律など
- 「不正調査」コース
不正調査の目的、不正調査の計画立案、客観的証拠の保全・収集・検証、不正調査と調査報告書の作成など
- 「不正防止」コース
不正防止のためのコーポレートガバナンス、不正防止・発見統制の評価と検証、不正リスク評価、不正リスク管理など
このように見ると、社内で発生した不正の調査から対策の立案に至るまで、様々なスキルや知識が集約されていることが分かります。
逆に言えば、これらについて「まったくわからない」人が対応するのはとても難しそうだと言えるかもしれません。
どの会社でも毎日の仕事に手一杯で、突然発覚した「不正」に対して効果的、効率的に対応するのは難しい面があろうと思います。
そんなときに、各社の実態と不正の内容に応じて、調査から再発防止までの一連のTODOについて、また、できることなら不正の発生を少しでも減らせるような対策立案について、微力ながらアドバイスさせていただければと考えています。
ぜひ、お気軽にお問合せください。
次回予告
これまで8回にわたり、当事務所のお取扱い範囲をご紹介してまいりました。次回は、これらの「まとめ」を掲載したいと考えています。
※これまでの投稿については、以下ご参照ください。
1)第12次報告の概要とA判定業務(「法務部門が主管する企業が多い業務」―11種類の事務)
2)B判定業務(「多くの法務部門がA判定ほどではないが主管・関与することが多いと回答した業務」―7種類の事務)
3)C判定業務(「他に主管する部門があるが、法務部門が関与している事務」―18種類の事務)
4)X判定業務(「法務部門があまり主管・関与しない事務」―14種類の事務)
5)これまでに取り上げられなかった事務(5分野18種類)
6)経営法友会の分析報告の項目になかったこと。企業法務支援/アドバイザリー・コース
7)企業法務支援/アドバイザリー・コース(再掲)と実務サポートコース
【引用】
一般社団法人日本公認不正検査士協会ホームページ
*1 会員の職業別分類
(https://www.acfe.jp/about-japan/occupation/)
*2 CFE資格試験 2. 出題範囲・出題形式・合否判定
(https://www.acfe.jp/cfe/exam/)
*3 不正対策eラーニング e-fraud
(代表 長谷川真哉)
Copyright © 2023,2024 行政書士豊総合事務所 All Rights Reserved.
コメント