相続登記申請義務化に伴う過料が10万円を超える場合があります。
前回記事「相続登記申請義務化―「過料」が10万円を超えることはないのか 【その1】」では、「不動産の個数が2以上である場合」を紹介しました。
この記事では、「人数」等について解説します。ご自身が誤解していないかお確かめください。
人数について
お気づきの方もいると思いますが、前回記事のケース1、ケース2のいずれにも、さりげなく「1人の相続人について」と記載してあります。
実は、相続登記申請義務化に伴う過料は、「相続人ごとに」生じます。
したがって、前の例のように「一筆の土地」の上に「一棟の建物」があるという不動産(どちらも同じ被相続人の名義)をAさん、Bさん、Cさんの3人が相続したものの、所定の期間内に誰も相続登記をしなかった場合、過料の計算は次のようになります。
Aさん 10万円以下の過料×2つの不動産
Bさん 10万円以下の過料×2つの不動産
Cさん 10万円以下の過料×2つの不動産
つまり、ごく普通の一戸建てであったとしても、全体として最大で60万円の過料が発生し得ることがわかります。
共有不動産の場合
この件においては、相続が発生する前の不動産が、単独所有であろうが、複数の人が共有していようが、過料の計算には影響しません。
例えば、ある地方の「山(10筆分)」を、その地に暮らす20人が共有していたとします。
その20人の共有者がいずれお亡くなりになり、それぞれの家族が相続した結果、次のようになったと仮定します。
アさん(持分20分の1) 相続人3人
イさん(持分20分の1) 相続人5人
ウさん(持分20分の1) 相続人2人
(中略)
トさん(持分20分の1) 相続人3人
この場合、アさんの3人の相続人は、それぞれが、「10万円以下の過料」×10筆、最大100万円の過料を負担する可能性があります。
たとえ被相続人であるアさんが20分の1の持分しか保有していなかったとしても、その相続人は「1人の相続人」であり、義務が20分の1になる訳ではありません。
さらに言えば、一人一人の相続人にとってはあまり関心がないことかもしれませんが、アさんからトさんまでの20人の共有者を相続した人の合計人数が仮に「70人」だったとすれば、この10筆分の山についての過料の総額は、最大で7000万円(「10万円以下の過料」×10筆×70人)になると計算することができます。
仮に、現時点では過料の請求がなされなかったとしても、その次の世代では?
そのときの相続人の総数は、いったいどうなっていることでしょうか・・。
過料を支払っても登記申請義務は消えない
もう一つ重要なことがあります。
相続登記申請義務を果たさなかったために過料を支払ったとします。
ここで大切なことは、過料を支払ったからといって、相続登記申請という義務が果たされた訳ではないということです。
相続登記を申請するまで、場合によっては世代を超えて過料が課される、つまり過料の支払は一度では済まない可能性すらある訳です。
ここまでお読みになっても、まだ「相続登記などせず、10万円の過料を払った方が安い」と思いますか。
やる気はあるけれども、何から手をつけてよいかお悩みの方は、ぜひ当事務所までご相談ください(登記申請は、提携の司法書士が担当します)。
※本稿に記載した内容は、投稿日現在、公開されている官公署の情報には明記されていない模様です。そこで、公的な窓口に確かめた結果をもとに、当事務所にて作成した具体例をご紹介しています。
※本稿は、一般の読者の皆さまを対象にできるだけ平易・簡潔な表現としています。相続登記の申請義務化についての詳細は、法務省の「相続登記の申請義務化特設ページ」をご参照ください。
◆行政書士豊(ゆたか)総合事務所
代表・特定行政書士 長谷川真哉
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