結論から言えば、相続登記申請義務化に伴う過料が10万円を超える場合があります。
どちらかと言えば、その方が多い可能性すらありますから、ご自身が誤解していないか注意が必要です。
相続登記申請の義務化
法律の改正に伴い、2024(令和6)年4月1日(以下、施行日)より、相続(遺言を含む。)によって不動産の所有権を取得した相続人は、一定の期間に相続登記の申請をしなければならなくなりました。
一定の期間とは、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」とされています。
これは、施行日より前に発生した相続についても同様です。この場合、3年以内とは、2027(令和9)年3月31日までとなります。
この点はとても影響が大きいと思われます。
例えば、祖父名義の土地を名義変更せずにそのままにしていたような場合が該当します。なかには、お心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ペナルティがある
正当な理由がないにもかかわらず、相続登記義務をはたさないと、「10万円以下の過料」の適用対象となります。
◇相続登記の申請義務化についての詳細(正当な理由の例を含む制度の全般)は、法務省の「相続登記の申請義務化特設ページ」をご参照ください。
「10万円以下の過料」の誤解
相続登記を申請するためには、一定の手続きが必要になります。事前に色々と調べなければならないこともあります。専門家(司法書士、弁護士など)に委託すると費用(報酬と実費)がかかります。
また、過料というものは行政罰であって犯罪ではありませんから、前科がつく訳でもありません。
これらのことから、「10万円以下の過料ですむなら、相続登記をしないまま放置しよう。仮に請求されても、最大の支払額は10万円だから、手間もかからないし専門家にお願いするより安く済む」との誤解が一部にあるようです。
本当にそうなのでしょうか。
過料が10万円を超えることはないのか
「10万円以下の過料」とされていますが、状況によって「10万円以下」の場合もあれば、「10万円を超える」場合もあります。
以下、具体的に解説します。
ケース1 過料が10万円以下となる場合
1人の相続人について、相続の対象となる不動産が1つだけの場合が該当します。
この場合の1つの不動産とは、土地であれば「一筆」、建物であれば「一棟」のことです。
したがって、土地の上に建物もある(土地と建物が同じ被相続人の名義である)場合は、ケース1には該当しません。なぜなら不動産が2つだからです。
ケース2 過料が10万円を超える場合
相続登記申請義務化に伴う過料が10万円超となる可能性があるのは、1人の相続人について、2つ以上の不動産を相続した場合です。
ケース1の後半でご紹介した、土地の上に建物がある(土地と建物が同じ被相続人の名義である)場合もこれに該当します。
例えば、「一筆の土地」の上に「一棟の建物」があるとします。亡くなったお父様が土地つきの一戸建てを所有していたような場合です。
それを相続したAさんには、次のような過料が生じえます。
「10万円以下の過料」×「2つの不動産」
これは、最大で20万円となることを意味します。
ここまでお読みになっても、まだ「相続登記などせず、10万円の過料を払った方が安い」と思いますか。
やる気はあるけれども、何から手をつけてよいかお悩みの方は、ぜひ当事務所までご相談ください(登記申請は、提携の司法書士が担当します)。
※本稿に記載した内容は、投稿日現在、公開されている官公署の情報には明記されていない模様です。そこで、公的な窓口に確かめた結果をもとに、当事務所にて作成した具体例をご紹介しています。
※本稿は、一般の読者の皆さまを対象にできるだけ平易・簡潔な表現としています。制度の詳細については、記事中のリンク先のサイトをご参照ください。
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