従来ならともかく、現在では「故人名義不動産」をそのまま放置することにはまったくメリットがなく、むしろリスクしかない状態になっています。
そのリスクを考えるにあたっては、まず、かつてのメリットを振り返ってみましょう。
放置することのメリット ・・ 手間もお金もかからなかった
相続した不動産の名義をそのままにする(つまり、放置すること)のメリットを端的に言えば、手間もお金もかからないということです。
かつての所有者であるご先祖様(親、祖父母、曾祖父母等)のご逝去後、その所有していた不動産について相続登記(所有権移転登記)をする場合、遺言書または遺産分割協議書を添えて登記申請する必要があります。
「故人名義不動産」のまま放置するということは、この申請手続きをしないということですから、遺言書も遺産分割協議書も用意する必要はなく、また、登記申請にあたって必要な登録免許税、司法書士への支払も発生しないことになります。
かつては、このように放置することについて、法律上の問題はありませんでした。
手間もコストもかからず、法律上の問題もないことから、放置する人は少なくはなく、その状態が代々続いているケースもままありました。
次に、放置した場合にどのようなリスクが生じるか確認しましょう。
放置した場合のリスク① トラブルや不便の原因に
大別すると2種類のリスクがあります。
一つは不動産に関して他人とトラブルが生じる場合があることです(これは、従来から変わりません)。
不動産に関するトラブルとは、例えば次のようなものです。
[不動産の権利に関すること]
1)登記時期が遅れるほど、元の相続人が死亡する等してその子どもが相続人になるなど、相続人の範囲が拡大し、遺産分割の合意形成が難しくなる
2)なんらかの事情により、他の相続人による相続登記申請が受理され、事情を知らない他人(買い手)がその不動産を取得し登記を済ませると、その買い手に対して自分の権利(所有権)を主張できなくなる(不正な手続きが疑われる可能性が高いので、ここではこれ以上触れません)
[不動産の処分や活用に関すること]
1)その不動産を売却することができない
買い手の立場で考えれば当然のことですが、不動産を購入すれば、当然所有権の移転登記を申請します。
しかし、売り手が登記簿上の所有者でなければ登記義務を果たすことができないので、登記簿上の所有者でない人から不動産を購入することは、通常はありえません。
2)融資を受けるときの担保にならない
なんらかの事情で融資を受けようとした場合(建物の修繕など、その不動産に関わる場合もありますが、それだけには限りません)、不動産を担保にすることがあります。
担保(抵当権)の設定にあたっては、その不動産が借り手の名義であることが要求されるのが一般的です。
そのほかにも、いくつかの例がありますが、長くなるので省略します。
放置した場合のリスク② ペナルティの対象に(改正法の影響)
もう一つのリスクは、法律の改正に伴い、相続登記申請が義務化されたことです。
一定期間内に申請を行わないと10万円以下の過料の対象となりました。
これは、令和6(2024)年4月1日より施行され、その前に生じた相続も対象となります。
その前に生じた相続の場合、登記申請期限は原則として2027(令和9)年3月31日までです。
対応するためには手間も時間もかかりますから、お心当たりのある方は今すぐ準備を開始することをお奨めします。
詳しくは、次の記事をご一読ください。
◆故人名義の不動産―相続登記をせずに放置したままで何から手をつけてよいかお悩みの方は、当事務所までご相談ください
相続登記申請義務化―「過料」が10万円を超えることはないのか 【その1】 不動産の個数
相続登記申請義務化―「過料」が10万円を超えることはないのか 【その2】 人数ほか
どのような対策を要するのか
そのような事態を避けるためには、「相続登記(所有権移転登記)をする、の一択」です。
相続登記申請ができるのは、司法書士か弁護士だけです。
そのほか、登記申請の前後に様々な準備や手続きがあります。
例えば、①被相続人(お亡くなりになった先代の名義人)のこと、②相続人(不動産を含む先代の財産を引き継ぐ人)のこと、③相続する不動産の調査・特定、④遺産分割協議書(遺言書がない場合)、⑤名義変更後の所轄官公署への届出(山林、田・畑)など。
これらは、行政書士もお手伝いすることができます。
何から手をつけてよいかお悩みの方は、ぜひ当事務所までご相談ください(登記申請は、提携の司法書士が担当します)。
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※本稿は、一般の読者の皆さまを対象にできるだけ平易・簡潔な表現としています。相続登記の申請義務化についての詳細は、法務省の「相続登記の申請義務化特設ページ」をご参照ください。
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